天鳥船

天(あまの)鳥(とり)船(ふね)とは、古事記の冒頭に出てくる大きな楠の木を繰り抜いた丸木船のことで、石(いわ)楠(くす)船(ぶね)とあるから
堅固な楠の幹の二股のところを利用した二股(ふたまた)尾(お)船(ぶね)と言われる古代の船の形であった。

遠く海原を行く船の両側に櫂を出して漕ぐ姿は鳥が天空を飛んでいる様に見えたに違いない。
海や船は誰しも心の奥の記憶を呼び起こす。

大きな樹にしめ縄をはり大切にするのは、海の向こうから来た古代人が故郷に帰るためには船が必要だったのであろう。
この思いは現代人にも受け継がれている。この花崗岩の水鉢を天鳥船に見立てて、作庭した。

寸庭とは私の敬愛する京庭師の佐野旦齊(戦後間もなく、ニューヨーク近代美術館に作庭 S42年没)が称えた作庭の精神を意味する言葉である。
彼の云う、「小さい庭にも、宇宙の悠々たる時の流れを表現する」を試みたマンションの玄関の庭である。(大阪 2007年作)